外因性ケトンは運動後の回復に効くか、16研究のレビューで有意差なし
J Sports Sciに先行公開された外因性ケトンのレビュー。16件中7件のメタ解析で筋肉痛・筋グリコーゲンに有意差なし、乳酸は対照条件がわずかに有利だった。
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運動後の回復をうたう「外因性ケトン」のサプリは、本当に筋肉痛やグリコーゲンの回復に役立つのでしょうか。ベルギーの研究チームが2026年10月29日、無作為化比較試験とクロスオーバー試験をまとめたシステマティックレビューとメタアナリシスを、J Sports Sci誌でオンライン先行公開しました。16件の研究のうち7件をメタアナリシスに含めた結果では、筋肉痛にも筋グリコーゲンの再合成にも、有意な差が出ませんでした。
ケトンのサプリで、回復の何を調べたのか
外因性ケトンは、体内で作られるケトン体を、サプリメントや飲料として外から補給するものです。抄録によると、運動後の回復を高める手段として注目されている、と書かれており、成人を対象に回復の指標への効果を調べたのが、今回のレビューです。
検索には、PubMed、Embase、Web of Scienceが使われました。外因性ケトンの補給を調べた無作為化比較試験とクロスオーバー試験が対象で、条件を満たしたのは16件、そのうち7件がメタアナリシスに含まれています。著者らは、これを「探索的な(exploratory)メタアナリシス」と位置づけています。
筋肉痛、グリコーゲン、CKに有意な差は出なかった
抄録に示された主な結果は次のとおりです。
- 筋肉痛:SMD 0.39(95%信頼区間 -0.29〜1.07、p = 0.26、I² = 0%)。有意な差なし
- 筋グリコーゲンの再合成:SMD 18.21(95%信頼区間 -19.15〜55.56、p = 0.34、I² = 30%)。有意な差なし
- 運動後の乳酸濃度:平均差 0.34 mmol/L(95%信頼区間 0.02〜0.66、p = 0.04、I² = 0%)。対照条件のほうがわずかに有利で、臨床的な意味は限られていると見られる、と書かれています
- クレアチンキナーゼ(CK):有意な影響なし
- 身体的な回復の指標:一貫した改善は見られなかった
- 認知的な回復:結果は混在。反応時間で一部の改善が見られたが、ほかの多くの指標は影響を受けなかった
筋グリコーゲンのSMDは18.21と、SMDとしては異例の大きさで、信頼区間も-19.15〜55.56とかなり広い数字です。ここから読み取れるのは、効果の大きさではなく「推定の幅が広すぎて、結論を出せない」ということです。この値がどう算出されたのかは、抄録だけでは分かりません。詳しく知りたい場合は、論文の全文を確認する必要があります。
対象は主に運動習慣のある男性
論文は、現時点のエビデンスは、運動後の回復に対する外因性ケトンの利点が限られていることを示唆している、とまとめています。平易な要約(Plain Language Summary)でも、その後の運動パフォーマンス、筋肉痛、グリコーゲンの補充、主なバイオマーカーを有意に改善せず、乳酸と認知面にわずかで一貫しない効果があっただけ、と説明しています。
注意したいのは、結果の多くが、運動習慣のある健康な男性を対象にした研究に基づいている点です。運動習慣のある男性以外、たとえば女性や高齢者などに当てはまるかどうかは、この分析からは分かりません(これらの集団が研究に含まれていたかも、抄録には書かれていません)。著者らも、より多様な集団や回復の状況で、検出力の高い研究が必要だと述べています。なお、抄録にはケトンの種類や用量、投与期間、各研究の参加者数は書かれていません。
サプリを選ぶ側は、どう受け止めるか
論文から言えるのは、筋肉痛、筋グリコーゲンの再合成、CKに有意な差がなく、乳酸ではむしろ対照条件がわずかに有利だった、という点までです。メタアナリシスに含まれたのは7件で、指標ごとに何件を合算したかは抄録に書かれていません。
ここからは筆者の意見です。この結果は「外因性ケトンは回復に効かない」と断定するものではなく、「いまある研究では、効果を確かめられていない」という意味にとどまると考えます。信頼区間が広い指標では、効果がある可能性もゼロではありません。ただ、筆者が見た範囲ではケトンのサプリは高価な製品が多く、回復のために買う理由を、この結果から見つけるのは難しいと感じます。
回復を考えるなら、睡眠、食事、練習量の調整といった基本を先に見直すのが無理のない順番だと筆者は考えます。これはこの論文が示したことではなく、筆者の考えです。持病や服薬がある人、ケトン食を実践している人は、医師や管理栄養士に相談してください。この記事は、特定の製品の購入を勧めるものではありません。
出典
- PubMed「Effects of exogenous ketones on post-exercise recovery: A systematic review and meta-analysis」(PMID 42958814、2026年10月29日)
- J Sports Sci(DOI: 10.1080/02640414.2026.2750608)
2026年10月31日時点の情報です。
本記事はトレーニング・栄養に関する一般的な情報提供を目的としており、医療・栄養指導の代わりにはなりません。ケガや持病のある方、服薬中の方は、トレーニングや食事を変える前に医師にご相談ください。痛みや違和感があるときは中止してください。また、ドーピング禁止規定に反する物質・方法の使用を勧めるものではありません。