カーボローディングは1日8g/kg超を36〜48時間、63試験の分析
カーボローディングで筋グリコーゲンを増やすには、試合前36〜48時間に体重1kgあたり1日8gを超える炭水化物を――63試験・641人を分析した研究が公開。数字の読み方とばらつきの大きさなど注意点も整理しました。
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マラソンやトライアスロンの前に炭水化物を多めにとって筋肉のグリコーゲンをためる「カーボローディング」。どれくらいの量を、何日前からとればよいのかを、過去の研究をまとめて検討したメタ分析が、学術誌「Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports」2026年10月号に掲載されました。著者らは、筋グリコーゲンをしっかり増やすには、試合前の36〜48時間に体重1kgあたり1日8gを超える炭水化物をとる方法を挙げています。ただし、研究ごとのばらつきが大きく、この目安にも不確実さが残るとしています。
カーボローディングは「なんとなく前日にパスタを多めに」で済ませている人も多いと思います。今回の分析で分かったことと、数字をどう読めばよいかを整理します。
この記事の目次
63試験・641人の筋生検データをまとめた分析
論文は、英国リバプール・ジョン・ムーア大学などの研究者による「Dietary Carbohydrate Intake and Skeletal Muscle Glycogen: A Systematic Review and Meta-Analysis to Determine Optimal Carbohydrate Loading Strategies」です。
- 対象: 2026年6月までに5つのデータベースで公表された試験(ランダム化・非ランダム化の両方)
- 条件: 筋肉の採取(筋生検)でグリコーゲン量を測る前の24時間以上について、炭水化物の摂取量と運動の内容が報告されている試験
- 規模: 記述的なまとめに63試験(641人)、そのうち18試験を数値を統合するメタ分析に使用
筋グリコーゲンを実際に筋肉から測った研究だけを集めている点が特徴です。体感やタイムではなく、「筋肉の中にどれだけ燃料がたまったか」を直接見ています。
1日6.5g/kg超の群で筋グリコーゲンが平均191.9mmol/kg多かった
主な結果は次のとおりです。
- 体重あたりの炭水化物の摂取量と、筋グリコーゲンの量には関連があった(レクリエーションで運動する人ではr²=0.332、持久系のトレーニングを積んだ人ではr²=0.490)
- 炭水化物を「少なめ〜中程度」(1日6.5g/kg未満)から「多め〜非常に多い」(1日6.5g/kg超)に増やすと、筋グリコーゲンは乾燥重量1kgあたり平均191.9mmol増えた(95%信頼区間142.8〜241.1)。この値は、同じ人が条件を入れ替えて比べた試験から出たもので、別々の人を比べた試験では差がはっきりしなかった(+107.6、有意差なし)
- ただし研究間のばらつき(異質性)は非常に大きかった(I²=94%)
- 摂取量の増やし幅や、ローディングの期間でサブグループに差は見られたものの、ばらつきの原因までは説明できなかった
著者らは、筋グリコーゲンの量は主に炭水化物の量で決まり、炭水化物を増やす期間、トレーニングの状態、運動が重要な要因になるとまとめています。そのうえで、現時点の目安として次の2つを挙げています。
- 試合前の36〜48時間に、1日8g/kgを超える炭水化物をとる
- 事前にグリコーゲンを減らす運動をしておき、高GI(血糖値が上がりやすい)の炭水化物をとると、24〜36時間でより早く増やせる
体重60kgなら1日480g超、数字で見るとかなり多い
1日8g/kgという目安を実際の量に直すと、体重60kgの人で1日480gを超える炭水化物になります。ご飯(白米)だけでとるなら、茶碗1杯(150g)を炭水化物約55gとして計算すると約9杯分で、普段の食事の延長で何となく達成できる量ではありません。主食を増やすだけでは食事のかさが増えすぎるので、競技者向けの栄養指導では、餅やうどん、パン、果汁、スポーツドリンクなども組み合わせて、脂質を控えめにする工夫がよく紹介されます。論文の考察でも、胃腸の不快感を避けるため、食物繊維の少ない高GIの食品で補うことに触れています。
なお、論文の序論によると、これまでのガイドラインでは「36〜48時間に1日10〜12g/kg」が示されてきました。今回の「8g/kg超」はそれより低い下限です。また、この目安は「試合前の数日」に限ったものです。普段のトレーニング期間に同じ量をとり続ける話ではない点は押さえておきたいところです。
ばらつきが大きく、目安には不確実さが残る
論文自身が強調しているのが、結果のばらつきです。同じくらいの炭水化物をとっても、筋グリコーゲンのたまり方には個人差が大きいことが、以前から報告されてきました。今回の分析でも、異質性が94%と非常に高く、交絡する要因も多いため、著者らは「推奨には不確実さがある」とし、条件をそろえた研究がさらに必要だとしています。
- メタ分析は条件をそろえたランダム化試験に絞ったため18試験にとどまり、63試験の記述的なまとめには非ランダム化の試験も含まれる
- 参加者の約9割が男性で、年齢もおもに18〜30歳。よく鍛えた人では、摂取量とグリコーゲン量のはっきりした直線関係が見られなかった
- 1日12g/kg以上のデータは乏しく、どこで頭打ちになるかは分からない
- 筋グリコーゲンが増えることと、実際のレースの記録が良くなることは、同じではない(今回の分析は記録を評価していない)
今回の結果からは、「なんとなく前日に多めに食べる」だけでは、論文が示す量にも期間にも届いていない人が多いのではないかと考えます。まずは8g/kgを確実にとれるかを基準にし、それ以上は胃腸の様子を見ながら上乗せする順番が現実的でしょう。試合までに48時間とれるのか、前日しか調整できないのかを先に確認しておくと、どちらの目安を使うかも選びやすくなります。逆に、数字だけを追って試合直前に食べ慣れない量をとると、胃腸の不調で走れなくなるリスクもあります。個人差が大きいという結果を踏まえると、本番の数週間前の練習レースなどで、自分の体重に合わせた量と食品を一度試しておくのが現実的です。論文は持久系競技の前を想定しているため、短時間の筋トレや減量中に同じ量をとるかは、目的に合うかを先に考えたいところです。持病がある人や血糖値の管理が必要な人は、試す前に医師や管理栄養士に相談してください。
運動と栄養の研究については、カフェインと運動後の回復を分析した研究や、減量のペースと筋肉を残す痩せ方も参考にしてください。
出典
- PubMed: Jones RO, et al. Dietary Carbohydrate Intake and Skeletal Muscle Glycogen: A Systematic Review and Meta-Analysis to Determine Optimal Carbohydrate Loading Strategies. Scand J Med Sci Sports. 2026;36(10):e70379.
- PubMed Central: 同論文の全文(PMC13633599)
- Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports(doi: 10.1111/sms.70379)
2026年10月16日時点の情報です。
本記事はトレーニング・栄養に関する一般的な情報提供を目的としており、医療・栄養指導の代わりにはなりません。ケガや持病のある方、服薬中の方は、トレーニングや食事を変える前に医師にご相談ください。痛みや違和感があるときは中止してください。また、ドーピング禁止規定に反する物質・方法の使用を勧めるものではありません。