減量・カッティング

【ダイエットの科学①】減量のペースは週に何kgが正解?筋肉を残す痩せ方

筋肉を残しながら脂肪を落とす減量ペースは週に体重の何%か。エリート選手の研究とメタ分析をもとに、具体的な目安と計算方法を解説します。

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【ダイエットの科学①】減量のペースは週に何kgが正解?筋肉を残す痩せ方

【ダイエットの科学シリーズ 第1回/全6回】

「減量ペース→停滞期→食事設計→筋トレ→運動の種類→睡眠と歩数」の順に、根拠のあるダイエットの考え方を整理するシリーズです。第1回は「1週間に何kg落とすのが正解か」です。

「1か月で5kg痩せたい!」「夏までに10kg落としたい!」

ダイエットを始める時って、つい大きな目標を立てたくなりますよね。気持ちはめちゃくちゃ分かります。

でも、体重を落とすスピードが速すぎると、脂肪と一緒に筋肉まで落ちてしまう可能性があるんです。せっかく筋トレをしているのに、それではもったいない。

今回は、筋肉をなるべく残しながら脂肪を落とせる「減量ペース」について、研究をもとに解説します。

大前提:体重はカロリー収支で決まる

まず基本のおさらいです。体重が減るかどうかは、「摂取カロリー」と「消費カロリー」の差(カロリー収支)で決まります。

  • 摂取>消費 → 余ったエネルギーが蓄えられて体重が増える
  • 摂取<消費 → 足りない分を体の蓄えから使って体重が減る

「〇〇を食べれば痩せる」「△△だけ抜けばOK」といった方法も、結局はこのカロリー収支をマイナスにしているから痩せるわけです。

体脂肪1kgを落とすのに必要なマイナスは、一般的に約7,000kcal前後と言われています(あくまで目安の換算値で、実際には水分や筋肉の増減も含めて体重は変動します)。1日500kcalのマイナスなら、2週間で約1kgのペースです。

研究が示す「ちょうどいい」減量ペース

では、どれくらいのペースで落とすのがいいのでしょうか?

ノルウェーのGartheらが2011年に発表した研究では、エリートアスリートを2つのグループに分け、「1週間に体重の0.7%ずつ落とすグループ(ゆっくり)」と「1週間に体重の1.4%ずつ落とすグループ(速い)」で減量させました。

結果はこうです。

  • ゆっくり(週0.7%):脂肪が落ちながら、除脂肪量(筋肉など)は増えた
  • 速い(週1.4%):除脂肪量は増えなかった

同じ「痩せる」でも、ゆっくり落とした方が体の中身(体組成)は良くなったわけです。研究チームは、筋量や筋力を保ちたいなら週0.7%程度のゆっくりしたペースを勧めています。

あなたの場合は週何kg?

週0.7%を体重別に計算すると、次のようになります。

体重 週0.7% 1か月(約4週)
50kg 約0.35kg 約1.4kg
60kg 約0.42kg 約1.7kg
70kg 約0.49kg 約2.0kg
80kg 約0.56kg 約2.2kg

「え、1か月で2kgしか落ちないの?」と思うかもしれません。でも、3か月で6kg、半年なら10kg以上。しかも筋肉を残しながらです。長い目で見ると十分なペースなんですよね。

注意:エリート選手の研究である事

この研究の対象は、普段から高いレベルでトレーニングしているエリートアスリートです。一般の人にそのまま当てはまる保証はありません。体脂肪が多い人は、もう少し速いペースでも筋肉が落ちにくいとも言われています。

なので「週0.7%」は絶対のルールではなく、「筋肉を守りたいならこのくらいが目安」という基準として使ってください。

1日のマイナスは500kcal以内に

もう1つ、参考になる研究があります。

2022年にMurphyとKoehlerが発表したメタ分析では、カロリーが足りない状態(エネルギー不足)で筋トレをした場合、筋力は普通に伸びるのに、除脂肪量の増え方は小さくなる事が分かりました。さらに分析では、1日あたり約500kcalの不足があると、除脂肪量の増加が妨げられる事が示されています。

ここから言えるのは、筋肉を守りながら痩せたいなら、1日のマイナスは大きくても500kcal程度までに抑えるのが無難だという事です。先ほどの「週0.7%」とも、だいたい同じくらいのペースになります。

急激なダイエットが失敗しやすい理由

筋肉が落ちやすい以外にも、急なダイエットにはデメリットがあります。

  • 空腹がつらくて続かない:大きく食事を減らすほど、ストレスも大きくなります。
  • リバウンドしやすい:我慢の反動でドカ食いしがちです。
  • トレーニングの質が落ちる:エネルギー不足で重量が扱えなくなり、筋トレの効果も下がります。

このあたりは過去記事「食事制限ダイエットがほぼ確実にリバウンドする理由&解決方法」でも詳しく書いています。

実践:減量ペースの決め方3ステップ

  1. 今の体重×0.7%で「週の目標」を出す(60kgなら週0.4kg前後)
  2. 1日の摂取カロリーを、今より300〜500kcal減らす
  3. 2週間ごとに平均体重をチェックして調整(毎日の体重は水分で上下するので、平均で見るのがコツ)

体重が全然落ちない場合は100〜200kcalずつ減らし、逆にペースが速すぎる時は少し増やします。この「調整」の考え方は、次回の停滞期の記事でも詳しく扱います。

また、減量中もタンパク質はしっかり摂りましょう。1日の目安は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の推奨量が成人男性65g・成人女性50g(18〜64歳)。筋トレをしている人はもっと多めが目安になります。詳しくはシリーズ第3回(PFCバランス)で解説します。

よくある質問

Q. 最初の1週間で2kgも落ちました。速すぎますか?

A. ダイエットを始めた直後は、食事量が減る事で胃腸の内容物や体内の水分が減り、体重が一気に落ちる事がよくあります。これは脂肪だけが落ちたわけではないので、最初の1〜2週間の数字だけで判断せず、3週目以降のペースを見て調整しましょう。

Q. 体脂肪が多い人も週0.7%がいいの?

A. 本文でも触れたとおり、研究の対象はエリートアスリートでした。体脂肪が多い人は、もう少し速いペースでも筋肉が落ちにくいと言われています。ただ、速く落とすほど空腹やストレスも大きくなるので、「続けられるペースか」を一番の基準にしてください。

Q. 消費カロリーはどうやって知ればいい?

A. 計算式やアプリで目安は出せますが、誤差もあります。一番確実なのは、2週間ほど今の食事を記録しながら体重の変化を見る方法です。体重が変わらなければ、その摂取カロリーがだいたいの維持カロリーです。

まとめ

  • 体重はカロリー収支で決まる。脂肪1kgは約7,000kcalが目安
  • 週0.7%のゆっくり減量の方が、除脂肪量が増えた(Garthe, 2011)
  • 1日500kcal程度の不足で除脂肪量の増加が妨げられた(Murphy & Koehler, 2022)
  • 「速く痩せる」より「筋肉を残して確実に痩せる」方が、結果的に見た目は良くなる

というわけで、ダイエットの科学シリーズ第1回でした。次回は、多くの人がぶつかる「体重が落ちない停滞期」の正体に迫ります。

ダイエットの科学シリーズ

シリーズの記事一覧はこちら

参考文献

  • Garthe I, et al. Effect of two different weight-loss rates on body composition and strength and power-related performance in elite athletes. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2011;21(2):97-104.
  • Murphy C, Koehler K. Energy deficiency impairs resistance training gains in lean mass but not strength: a meta-analysis and meta-regression. Scand J Med Sci Sports. 2022;32(1):125-137.
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html

本記事はトレーニング・栄養に関する一般的な情報提供を目的としており、医療・栄養指導の代わりにはなりません。ケガや持病のある方、服薬中の方は、トレーニングや食事を変える前に医師にご相談ください。痛みや違和感があるときは中止してください。また、ドーピング禁止規定に反する物質・方法の使用を勧めるものではありません。