ベンチプレスで肩が痛いときとは負担の要因と見直し方

ベンチプレスで肩が痛いとき、どう判断して何を見直せばよいのか。手幅・肩甲骨の位置・疲労と肩の負担に関する研究、日本整形外科学会が示す肩腱板断裂の症状(夜間痛など)をもとに、受診の目安と再開時の手順を解説します。
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この記事の目次
ベンチプレスで肩が痛いときとは
ベンチプレスは胸を鍛える代表的な種目ですが、「ベンチプレスをすると肩が痛い」「肩の前が痛くて重量を上げられない」という悩みもよく聞かれます。ウエイトトレーニング系競技のケガを調べた2017年のレビューでも、肩はケガの多い部位の筆頭に挙げられています。
この記事では、ベンチプレスのフォームの違いと肩への負担を調べた研究、疲労と肩のケガの関係を整理したレビュー、日本整形外科学会が示す肩腱板断裂の症状を紹介し、肩が痛いときの判断の目安と、痛みがない状態での見直し方をまとめます。この記事は診断のためのものではありません。肩の痛みが続く場合は、自己判断でトレーニングを続けず、整形外科を受診してください。
基本(ベンチプレスと肩の負担)
手幅・肩甲骨・バーを押す方向で負担が変わる
2024年の研究(Noteboomら)は、経験のある筋力系アスリート10人に、手幅(肩峰間の幅の1倍・1.5倍・2倍)、脇の開き(45度・70度・90度)、肩甲骨の位置(自然・寄せる・寄せない)を変えた21通りのベンチプレスを行ってもらい、筋骨格モデルで肩関節への負担を推定しました。結論として、手幅、肩甲骨の位置、そしてバーを左右方向に押す力の大きさが、肩への負担とケガのリスクに影響するとしています。具体的には、手幅を肩峰間の幅の1.5倍より狭くすると肩鎖関節の圧迫が小さくなり、肩甲骨を寄せることや同じく1.5倍未満の手幅で、肩関節の後方へのせん断力と腱板の活動が小さくなりました。左右方向の力は人によって大きく異なり、肩への負担を大きく左右していました。少人数のモデル研究であり、特定のフォームが痛みを防ぐと断定するものではありません。
疲労と限界までの反復
2024年のレビュー(MotlaghとLipps)は、パワーリフターのベンチプレスと肩のケガについて、疲労や肩の動きの関係を整理しました。過度な疲労を避けるため、毎回限界まで反復する方法よりも、RPE/RIR(主観的な余力)や速度を使った調整、自己調整型のトレーニングを優先すべきだとしています。一方で、肩の関節の動きに関する確かな知見はまだ不足しているとも述べています。
受診したい症状
日本整形外科学会によると、肩腱板断裂では、肩の運動時の痛み、夜間の痛み、腕を上げるときに力が入らない、肩の前上面でジョリジョリという音がする、といった症状が見られます。夜間痛で眠れないことが受診の一番の理由とされています。40歳以上の男性に多いとされますが、トレーニングをしている人で同様の症状があれば、年齢にかかわらず受診を考えましょう。
具体例(症状別の判断と見直し)
| 状況 | 判断の目安 |
|---|---|
| 夜、肩が痛くて眠れない | 整形外科を受診 |
| 腕を上げるときに力が入らない、音がする | 整形外科を受診 |
| バーを下ろした位置で鋭い痛みが出る | 中止し、続くなら受診 |
| トレーニング翌日に胸や肩の筋肉が痛い | 筋肉痛の可能性。関節の痛みとは区別する |
痛みがないときのフォーム見直しの例
| 項目 | よくある状態 | 見直しの例 |
|---|---|---|
| 手幅 | 極端に広い | 肩峰間の幅の1.5倍未満(やや狭め)を目安に、痛みのない幅を探す |
| 脇の開き | 90度近くまで開く | やや脇を締めて下ろす |
| 肩甲骨 | セット中に崩れる | 寄せて下げた位置を保つ |
| 疲労 | 毎セット限界まで | 1〜2回の余力を残して終える |
再開時の重量の例
肩の痛みで休み、医師から許可が出た人が、以前80kg×5回を扱っていた場合の一例です。まずは40〜50kgで痛みのない手幅と深さを確認し、問題がなければ1回あたり2.5kgずつ戻します。違和感が出たら一段階戻します。
ベンチプレスで肩が痛いときの実践ステップ
- ベンチプレス中に肩が痛くなったら、そのセットで中止する。
- 夜間痛、力が入らない、引っかかる感じなどがあれば、整形外科を受診する。
- 痛みが続く場合は、自己判断でプレス系の種目を続けない。
- 再開が許可されたら、軽い重量で手幅・脇の開き・肩甲骨の位置を確認し、動画を撮る。
- 余力を1〜2回残してセットを終え、重量は少しずつ戻す。
- 痛みの出ない種目(医師や専門家と相談したもの)で、胸のトレーニングを補う。
ベンチプレスで肩が痛いときの注意点
- 研究は少人数で、健康な経験者を対象にしたものが中心です。どのフォームが自分に合うかは個人差があります。
- 痛み止めで痛みを抑えて高重量を続けるのは避けてください。薬の使用は医師や薬剤師に相談しましょう。
- 肩の痛みは、首の病気など肩以外が原因のこともあります。手のしびれを伴う場合などは特に受診してください。
- 補助者(スポッター)なしで限界まで挙げるのは、肩以外の事故の危険もあります。
ベンチプレスで肩が痛いときでよくあるミス
- 肩が痛いのに、手幅だけを変えて同じ重量を続ける。
- 毎回限界まで挙げ、疲労でフォームが崩れたまま反復する。
- 痛みが引いた直後に、元の重量へ一気に戻す。
- 夜間痛があるのに「筋肉痛だろう」と放置する。
ベンチプレスで肩が痛いときのチェックリスト
- 夜間痛、脱力、引っかかりなど、受診すべき症状がないか確認したか。
- 痛みがある日は中止しているか。
- 手幅・脇の開き・肩甲骨の位置を確認したか。
- 余力を残してセットを終えているか。
- 再開時は軽い重量から段階的に戻しているか。
ベンチプレスで肩が痛いときのFAQ(よくある質問)
Q. ベンチプレスで肩が痛いのは手幅が広すぎるからですか?
A. 手幅は肩への負担に影響する要因の一つですが、脇の開き、肩甲骨の位置、バーを押す方向なども関係します。痛みが続く場合は、まず原因を医師に確認してください。
Q. 肩が痛いときはダンベルプレスに替えればいいですか?
A. 手の位置を調整しやすいため楽に感じる人もいますが、痛みの原因によっては適しません。医師や専門家と相談して決めましょう。
Q. 肩の痛みを予防するにはどうすればいいですか?
A. 十分なウォーミングアップ、余力を残したセットの終え方、急な重量アップを避けることが基本です。違和感の段階で重量を下げることも大切です。
筆者の見解(ベンチプレスで肩が痛いとき)
ベンチプレスの肩の痛みは、手幅などフォームの一要素だけでなく、疲労のため方や重量の上げ方も含めた積み重ねで起こると考えます。研究を見ると、負担に影響する要因は複数あり、個人差も大きいようです。私見では、夜間痛や力が入らないといったサインを見逃さず受診することと、余力を残して記録を伸ばすことが、肩を守りながら胸を鍛え続けるための現実的な方針だと思います。
ベンチプレスで肩が痛いときの関連項目
- ベンチプレスの手幅・グリップ
- ベンチプレスの重量目安
- RPE・RIR
- 筋トレ前のウォーミングアップ
- ダンベルプレス(ベンチプレスとの違い)
出典(一次情報)
- Effects of bench press technique variations on musculoskeletal shoulder loads and potential injury risk(Front Physiol, 2024)
- The Contribution of Muscular Fatigue and Shoulder Biomechanics to Shoulder Injury Incidence During the Bench Press Exercise: A Narrative Review(J Strength Cond Res, 2024)
- 肩腱板断裂(日本整形外科学会)
- The Epidemiology of Injuries Across the Weight-Training Sports(Sports Med, 2017)

本記事はトレーニング・栄養に関する一般的な情報提供を目的としており、医療・栄養指導の代わりにはなりません。ケガや持病のある方、服薬中の方は、トレーニングや食事を変える前に医師にご相談ください。痛みや違和感があるときは中止してください。また、ドーピング禁止規定に反する物質・方法の使用を勧めるものではありません。