RPE・RIRとは筋トレのきつさの目安と重量調整法

RPEは主観的なきつさ、RIRは「あと何回できるか」を表す筋トレ用語です。RIRを使ったRPEスケールの表、メニューへの書き方、初心者が使うときの注意点(予測は外れやすい)を研究をもとに解説します。
公的機関・公式資料などの一次情報と照合して作成しています。このサイトについて
RPE・RIRとは
RPE(Rating of Perceived Exertion、主観的運動強度)は、運動のきつさを自分の感覚で数値化したものです。筋トレでは、RIR(Repetitions in Reserve、残り回数)=「そのセットをあと何回続けられたか」と組み合わせた「RIRベースのRPEスケール」がよく使われます。
たとえば「ベンチプレス 3×8 @RPE8」とは、「8回×3セットを、各セットあと2回できる余力を残す重さで行う」という意味です。1RM(最大挙上重量)の何%という指定と違い、その日の調子に合わせて重量を調整できるのが特徴です。この記事では、RPEとRIRの意味、スケールの読み方、使い方と注意点を整理します。
RPE・RIRの基本
RIRベースのRPEスケールは、2016年に筋トレ専用の尺度として発表されました。Strength and Conditioning Journalの解説論文に示された対応は次のとおりです。
| RPE | RIR(残り回数) | 状態 |
|---|---|---|
| 10 | 0 | 最大努力。もう1回もできない |
| 9 | 1 | あと1回できた |
| 8 | 2 | あと2回できた |
| 7 | 3 | あと3回できた |
| 5〜6 | 4〜6 | あと4〜6回できた |
| 3〜4 | — | 軽い努力 |
| 1〜2 | — | ほとんど努力なし |
つまり、「RPE=10−RIR」と考えると覚えやすくなります(RPE7〜10の範囲)。
このスケールの元になった2016年の研究(J Strength Cond Res)では、平均24歳の29人(スクワット経験者15人=平均経験約5年、初心者14人=平均経験約0.4年)が、1RMを測ったあと1RMの60%・75%・90%で1回ずつ挙上し、そのつどRPEを答えました。バーの平均速度とRPEの間には、経験者でr=−0.88、初心者でr=−0.77の強い負の相関がありました(重いほど速度が落ち、RPEが高くなる)。著者らは、日々の負荷調整や1RMテスト中のフィードバックに実用的な方法だと結論づけています。
RPE・RIRの具体例
RPEを使った重量調整の例です。メニューは「スクワット 5回×3セット @RPE8(あと2回残す)」とします。
| セット | 重量 | 実際の感覚 | 次の判断 |
|---|---|---|---|
| 1 | 80kg | あと3回できそう(RPE7) | 少し軽い。2.5kg上げる |
| 2 | 82.5kg | あと2回できそう(RPE8) | 狙いどおり。維持 |
| 3 | 82.5kg | あと1回が限界(RPE9) | 疲労で上振れ。次回も同重量から |
睡眠不足の日に同じ82.5kgがRPE9〜10に感じるなら、その日は80kgに落としてRPE8に合わせる、という使い方ができます。%1RM指定だと調子の悪い日に重すぎ、調子のよい日に軽すぎることがありますが、RPEはこのずれを埋めるための道具です。
メニューへの書き方の例:
– 「ベンチプレス 3×10 @RPE8〜9」=10回を、あと1〜2回残す重さで3セット
– 「アームカール 2×12 @RIR2」=12回を、あと2回残す重さで2セット
RPE・RIRの実践ステップ
- まずは慣れた種目で、毎セット後に「あと何回できたか」をメモする。
- 時々、安全な種目(マシンなど)で実際に限界まで行い、予測と実際の差を確かめる。
- 予測と実際の差が小さくなってきたら、メニューにRPEを書き込む。
- 最初はRPE7〜8(あと2〜3回)を中心にする。
- 狙ったRPEより軽ければ重量を上げ、重ければ下げる。
- 重量・回数・RPEを毎回記録し、同じRPEで扱える重量が伸びているかを見る。
RPE・RIRの注意点
- RIRの予測は完全ではありません。2017年のPeerJの研究(141人が6種目を限界まで1セットずつ実施)では、参加者は実際にできる回数を少なめに予測する傾向があり、予測の標準誤差は種目により約2.6〜3.4回でした。経験とともに精度が上がる傾向も示されていますが、経験者でも完全には当たっていません。
- 解説論文でも、初心者はRIRを記録する練習をしつつ、精度が上がるまではRIRスケールだけでトレーニング強度や進め方を決めない方がよいとされています。
- RPE10(限界)まで行うセットは、ベンチプレスやスクワットなど潰れる危険がある種目では、セーフティバーや補助者を用意してください。
- 持病がある人は、主観だけで強度を上げず、医師の指示を優先してください。
RPE・RIRでよくあるミス
- 「きつい気がする」でRPE9とつけ、実際はあと4〜5回できている。
- RPEを書かずに重量だけ記録し、調子の良し悪しが分からなくなる。
- 毎セットRPE10まで追い込み、疲労がたまる。
- RPEを上げることを目標にしてしまう。目標は同じRPEで扱える重量を伸ばすことです。
RPE・RIRのチェックリスト
- RPE=10−RIRの関係を理解している。
- 毎セット後に残り回数をメモしている。
- 時々、安全な種目で予測を確かめている。
- メインのセットはRPE7〜9の範囲に収めている。
- 限界まで行う種目では安全策をとっている。
RPE・RIRのFAQ(よくある質問)
Q. RPEと%1RMはどちらを使うべきですか?
A. 併用が実用的です。%1RMで目安の重量を決め、RPEで当日の微調整をします。1RMの考え方は1RM・RMを参照してください。
Q. 初心者でもRPEを使えますか?
A. 使えますが、研究では初心者ほど予測がずれやすいとされています。まずは記録の練習から始め、重量の決定は回数の基準(例:8〜12回で限界)と併用しましょう。
Q. 筋肥大にはRPEいくつがいいですか?
A. 一つの決まった値はありません。多くのメニューではRPE7〜9(あと1〜3回)が使われます。限界近くまで行うことの意味は筋肥大で解説しています。
Q. 有酸素運動のRPEと同じですか?
A. 有酸素運動では6〜20のボルグスケールなど別の尺度も使われます。筋トレのRIRベースのスケールとは別物と考えてください。
筆者の見解(RPE・RIR)
RPEとRIRは、調子の波を前提にトレーニングを調整できる、合理的な道具だと考えます。ただし研究が示すとおり、予測は外れやすいので、私見では「残り回数を当てる練習」そのものを筋トレの技術の一つと考えるのがよいと思います。数値を記録し続けることで、自分の限界の感覚が育っていく点に価値があると考えます。
RPE・RIRの関連項目
出典(一次情報)
- Novel Resistance Training-Specific Rating of Perceived Exertion Scale Measuring Repetitions in Reserve(J Strength Cond Res, 2016、PubMed)
- Application of the Repetitions in Reserve-Based Rating of Perceived Exertion Scale for Resistance Training(Strength Cond J, 2016、PMC)
- Ability to predict repetitions to momentary failure is not perfectly accurate, though improves with resistance training experience(PeerJ, 2017、PMC)
本記事はトレーニング・栄養に関する一般的な情報提供を目的としており、医療・栄養指導の代わりにはなりません。ケガや持病のある方、服薬中の方は、トレーニングや食事を変える前に医師にご相談ください。痛みや違和感があるときは中止してください。また、ドーピング禁止規定に反する物質・方法の使用を勧めるものではありません。

