速筋・遅筋とは違いと割合、筋トレでの鍛え分け

速筋と遅筋の違いを、パワー・持久力・疲れやすさで比較。太もも前の筋肉で調べた割合のデータ、速筋を鍛える重量と回数の考え方、「遅筋は太くならない」などの誤解を一次情報をもとに解説します。
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この記事の目次
速筋・遅筋とは
速筋(そっきん)と遅筋(ちきん)は、筋肉を構成する筋線維の大きな2分類です。厚生労働省のe-ヘルスネット「筋力・筋持久力」では、速筋は「パワーが高いが、持久性が低く、疲労しやすい」、遅筋は「パワーは小さいが、持久性が高く、疲労に対する耐性が高い」と説明されています。速筋は筋力に、遅筋は筋持久力に関係します。
研究の世界では、遅筋をタイプI線維、速筋をタイプII線維(さらにIIA、IIX〈IIB〉などに細分)と呼びます。この記事では、速筋・遅筋の違いと割合、筋トレでの考え方を整理します。
速筋・遅筋の基本
速筋と遅筋の特徴を比較します。
| 項目 | 速筋(タイプII) | 遅筋(タイプI) |
|---|---|---|
| 発揮できる力 | 大きい | 小さい |
| 持久性 | 低い(疲れやすい) | 高い(疲れにくい) |
| 関係する体力 | 筋力・瞬発力 | 筋持久力 |
| 主な活躍場面 | ダッシュ、ジャンプ、重い重量の挙上 | 姿勢の維持、歩行、長距離走 |
| 俗称 | 白筋 | 赤筋 |
割合については、大学生年代の未トレーニングの男女(男性95人・女性55人)の太もも前の筋肉(外側広筋)を調べた2000年の研究があります。男女とも平均でおよそタイプI 41%、タイプIIA 31%、タイプIIAB 6%、タイプIIB 20%(そのほか中間型が各1%程度)で、線維の種類の分布に男女の有意差はほとんどありませんでした。一方、主要な線維の断面積はいずれも男性の方が大きく、男性ではタイプIIAが最も大きかったと報告されています。
つまり、外側広筋では「遅筋4割・速筋6割弱」程度が平均的な姿ですが、これはあくまで一つの筋肉の平均です。筋肉の部位や個人によって割合は異なります。
速筋・遅筋の具体例
筋トレでは、重い重量を持ち上げるほど、速筋を含む多くの筋線維が動員されると考えられています。一方、軽い重量でも、疲労が進んで限界に近づくと、より多くの線維が動員されていきます。2017年のメタ分析では、全セットを限界まで行う条件なら、1RMの60%以下の軽い負荷と60%超の重い負荷で筋肥大は同程度、最大筋力(1RM)の伸びは重い負荷が有利でした。
これを踏まえた鍛え分けの例です(1RM 100kgの人のスクワット)。
| 狙い | 重量の例 | 回数の目安 | 期待しやすい変化 |
|---|---|---|---|
| 最大筋力 | 85kg前後 | 3〜5回 | 高重量を挙げる力 |
| 筋肥大 | 70〜75kg | 8〜12回で限界 | 筋肉のサイズ |
| 筋持久力 | 40〜60kg | 15回以上 | 繰り返す力 |
e-ヘルスネットでは、筋持久力のトレーニングとして、最大筋力の4割程度の軽い負荷で限界近くまで反復し、毛細血管の発達によって酸素供給力を高める方法が紹介されています。
速筋・遅筋の実践ステップ
- 目的が「重いものを挙げる力」なら重い重量・少ない回数、「体を大きく」なら8〜12回中心にする。
- どの重量でも、セットの終わりは限界に近いところまで行う。
- 筋持久力が目的なら、軽い重量で回数を多くし、休憩を短めにする。
- 中級者になったら、重い日と中程度の日を組み合わせて両方の線維に刺激を入れる。
- 記録をつけ、目的の指標(重量・回数・サイズ)が伸びているか確認する。
速筋・遅筋の注意点
- 速筋・遅筋の割合は筋肉や個人で違い、外から見て判断することはできません。「自分は速筋タイプ」と決めつけてメニューを狭める必要はありません。
- e-ヘルスネットによると、骨格筋量の低下は25〜30歳頃から始まり、生涯を通して進行するとされています。若いうちからの筋トレ習慣が役立ちます。
- 高重量を扱う場合はフォームと安全器具の使用を優先し、関節に持病がある人は医師に相談してください。
- 「速筋に効く」とうたうサプリの効果は過信しないでください。
速筋・遅筋でよくあるミス
- 「遅筋は太くならないから軽い重量は無意味」と考える。研究では、限界まで行えば軽い負荷でも筋肉全体の肥大は同程度でした。
- 逆に「軽くても同じ」と考え、余力を大きく残したまま終える。
- 遺伝的な割合を理由に、トレーニングをあきらめる。
- 白筋・赤筋という呼び名だけで、魚の身のように明確に色分けされていると思い込む。
速筋・遅筋のチェックリスト
- 自分の目的(筋力・筋肥大・筋持久力)を決めている。
- 目的に合った重量と回数を選んでいる。
- セットの終わりが限界に近いところになっている。
- 割合を決めつけず、記録で効果を判断している。
速筋・遅筋のFAQ(よくある質問)
Q. 速筋は鍛えると増えますか?
A. 線維の太さは筋トレで大きくなります。線維のタイプの割合がどの程度変わるかは研究によって見解が分かれるため、本記事では断定しません。
Q. 遅筋も筋トレで太くなりますか?
A. 筋トレで遅筋線維も太くなり得ると考えられています。ただし、上で紹介した2017年のメタ分析は筋肉全体の大きさなどを比べたもので、線維のタイプ別の変化を示したものではありません。タイプ別の太くなりやすさは研究によって結果が異なるため、本記事では断定しません。
Q. 速筋が多いかどうか調べられますか?
A. 正確には筋肉の一部を採取する検査(筋生検)が必要で、一般的な方法ではありません。
Q. 年齢とともに速筋は減りますか?
A. 加齢とともに骨格筋量が低下することはe-ヘルスネットでも示されています。筋トレとたんぱく質摂取の併用が有用とされています(タンパク質の必要量参照)。
筆者の見解(速筋・遅筋)
速筋・遅筋の違いは知っておくと面白い知識ですが、筋トレのメニュー選びでは「目的に合った重さで、限界近くまでやる」という原則の方がずっと重要だと考えます。私見では、「遅筋は太くならない」「自分は遅筋タイプだから伸びない」といった思い込みこそが、継続の妨げになりやすいと考えます。
速筋・遅筋の関連項目
出典(一次情報)

本記事はトレーニング・栄養に関する一般的な情報提供を目的としており、医療・栄養指導の代わりにはなりません。ケガや持病のある方、服薬中の方は、トレーニングや食事を変える前に医師にご相談ください。痛みや違和感があるときは中止してください。また、ドーピング禁止規定に反する物質・方法の使用を勧めるものではありません。