加重懸垂とは始める目安と重さ(10kg)の決め方

加重懸垂は、ディッピングベルトやベストで重りを足して行う懸垂です。何回できたら始めるか、加重10kgの重さの意味、総重量での考え方、限界まで追い込まない進め方を研究をもとに解説し、肩や肘を守る注意点も整理します。
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この記事の目次
加重懸垂とは
加重懸垂とは、腰に巻くディッピングベルトにプレートやダンベルを下げたり、重りの入ったベストを着たりして、体重より重い負荷で行う懸垂(チンニング)です。自重の懸垂が10回以上できるようになると、1セットの回数が増えすぎて、筋肥大や筋力向上に適した負荷から外れていきます。加重懸垂は、そこからさらに負荷を上げるための方法です。
「加重懸垂 10kg」「加重懸垂 何回から」と検索されるように、始める時期と重さの決め方が代表的な疑問です。この記事では、その2点を中心に整理します。
基本(総重量で考える)
懸垂の負荷は「体重+加重」の総重量で考えます。研究でも、懸垂の1RM(1回だけ挙げられる最大重量)は、体重に外部の重りを足した値として扱われています。
| 体重 | 加重 | 総重量 | 加重の割合 |
|---|---|---|---|
| 60kg | 10kg | 70kg | 体重の約17% |
| 70kg | 10kg | 80kg | 体重の約14% |
| 80kg | 10kg | 90kg | 体重の約13% |
同じ「加重10kg」でも、体重が軽い人ほど負荷の上がり方(割合)が大きくなります。体重が増えた・減ったときも総重量が変わるため、記録には体重も残しておくと比較しやすくなります。
始める目安
ACSMの指針では、初心者は8〜12回で限界になる負荷、筋肥大目的では6〜12RMを中心とすることが示されています。これに当てはめると、自重で12回以上できるようになった時点が、加重を検討する一つの目安になります。ただし、反動を使わず、肘がほぼ伸びるところまで下ろす正しいフォームで数えた回数です。
特徴(限界まで追い込まない進め方)
Sánchez-Morenoらの2020年の研究(筋トレ経験のある男性29人、自重の懸垂を平均約16回できる人)では、8週間(16回)の自重懸垂トレーニングで、1セット内の挙上速度の低下が25%に達したところでセットを終える群と、50%まで続ける群を比べました。
| 群 | 結果 |
|---|---|
| 速度低下25%で終了 | 推定1RMや各重さでの速度など、評価したすべての項目が有意に向上 |
| 速度低下50%まで継続 | 変化なし |
限界までの回数以外の項目では、25%で止めた群の伸びが大きく、著者らは「速度低下25%に達した後の追加の反復は上積みにならず、むしろ伸びを妨げる可能性がある」と結論しています。
同じ研究グループの2017年の研究(男性52人)では、懸垂の挙上速度と1RMに対する割合(%1RM)に強い関係があり、速度の低下率からセットの残り回数を推定できることが示されました。速度計がなくても、「動きが明らかに遅くなったら、そのセットは終える」という考え方は、加重懸垂でも取り入れやすい目安です。
具体例(加重の決め方とメニュー)
最初の加重の決め方
| ステップ | 内容 | 例(体重70kg、自重12回) |
|---|---|---|
| 1 | 加重2.5〜5kgで回数を測る | 5kgで8回 |
| 2 | 6〜10回できる重さを採用 | 5kg |
| 3 | 限界の2回手前でセットを終える | 5kg×6回×3セット |
| 4 | 全セットで目標回数を超えたら加重を増やす | 7.5kgへ |
ACSMは、目標回数より1〜2回多くできたら2〜10%負荷を増やす進め方を示しています。総重量75kg(70kg+5kg)の2〜10%は1.5〜7.5kgなので、2.5kg刻みで増やすのは範囲内です。
背中トレのメニュー例
| 順番 | 種目 | 回数×セット |
|---|---|---|
| 1 | 加重懸垂 | 6〜8回×3(限界の1〜2回手前) |
| 2 | 自重懸垂(逆手など) | できる回数の8割×2 |
| 3 | シーテッドロウ | 10〜12回×3 |
加重懸垂の実践ステップ
- 自重で、反動なしに12回以上できるか確認する。
- ディッピングベルトか、ベストを用意する(ジムにあるか確認)。
- 加重2.5〜5kgから試し、6〜10回できる重さを探す。
- 動きが明らかに遅くなったところでセットを終える。
- 体重・加重・回数をセットで記録する。
加重懸垂の注意点
- 加重すると肩・肘への負担が増えます。痛みが出たら中止し、続く場合は医師に相談してください。
- ぶら下がる最下点で、肩の力を完全に抜いて重りにぶら下がると、肩に急な負担がかかります。下ろし切っても肩まわりの緊張を少し残します。
- 重りが振り子のように揺れると反動がつきます。重りを脚の間で安定させます。
- ベルトや器具は、耐荷重と劣化を確認してから使います。バーに乗り降りするときは台を使い、重りを落とさないよう注意します。
加重懸垂でよくあるミス
| ミス | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 自重の回数が少ないうちに加重 | フォームが崩れる | 自重12回以上を目安に |
| 毎セット限界まで行う | 研究上、伸びが鈍る可能性 | 動きが遅くなったら終える |
| 体重を記録しない | 総重量が比較できない | 体重と加重をセットで記録 |
| 加重を急に増やす | 肩・肘を痛めやすい | 2.5kg刻みで増やす |
加重懸垂のチェックリスト
- 自重で反動なしに12回以上できる
- 加重は6〜10回できる重さにしている
- 動きが遅くなったらセットを終えている
- 体重・加重・回数を記録している
- 重りが揺れないよう安定させている
加重懸垂のFAQ(よくある質問)
Q. 加重懸垂10kgはすごいですか。
A. 体重によって意味が変わります。体重70kgなら総重量80kgで、体重の約14%を足した負荷です。他人と比べるより、自分の総重量の伸びで判断しましょう。
Q. 自重の回数を伸ばすのと、加重するのはどちらがよいですか。
A. 回数が増えすぎると1セットの負荷が軽くなるため、筋肥大や筋力が目的なら、12回前後を超えたら加重を検討するのが一般的です。
Q. 限界まで追い込まないと効かないのでは。
A. 自重懸垂の研究では、速度低下25%で止めた群の方が、50%まで続けた群より多くの項目で伸びました。毎回の限界は必須ではありません。
筆者の見解(加重懸垂)
加重懸垂は、自重の懸垂が十分にできるようになった人にとって、背中を伸ばし続けるための自然な次の段階だと考えます。私見では、加重の重さより、反動なしで同じフォームを保てるかの方が大切です。研究も、限界まで続けるより余裕を残して止める方が伸びる可能性を示しており、焦らず2.5kgずつ積み上げるのがよいでしょう。
加重懸垂の関連項目
出典(一次情報)
- Effects of Velocity Loss During Body Mass Prone-Grip Pull-up Training on Strength and Endurance Performance(J Strength Cond Res, 2020)
- Movement Velocity as Indicator of Relative Intensity and Level of Effort Attained During the Set in Pull-Up Exercise(Int J Sports Physiol Perform, 2017)
- American College of Sports Medicine position stand. Progression models in resistance training for healthy adults(Med Sci Sports Exerc, 2009)

本記事はトレーニング・栄養に関する一般的な情報提供を目的としており、医療・栄養指導の代わりにはなりません。ケガや持病のある方、服薬中の方は、トレーニングや食事を変える前に医師にご相談ください。痛みや違和感があるときは中止してください。また、ドーピング禁止規定に反する物質・方法の使用を勧めるものではありません。